「ここに来ると落ち着くね」とエリスが言う。
「うん」と私は答える。
会話が続かない。
それは、それで。
「どうして、こんなことになっちゃったのかな」とエリスが言う。
「うん」
なんて答えていいのか、わからない。
これは、これで、もどかしかった。
「ねえ」エリスが言う「いざとなったらギルドこわしちゃいましょう」
「え」さすがに、それは。
でも。
エリスの気持ちは、わかる。
そんなふうにしか思わずにいられない感情を理解できる。
でも。
「ギルドを壊すのは反対かな」と私は言う。
「どうして?」
「そもそもの原因はチルネさんのことでしょう?」
「そうよ」
「いろいろ意見が出て対立ムードもあるけれど、もとをたどれば」
「チルネさんよ。あの子のせい。ギルドめちゃくちゃになっちゃった」
「だったら」私は言う「チルネさんを追い出せばいいと思う」
「それは残酷よ」
「関係のないメンバーを巻き込むより、いちばんの原因と戦うべきだわ」
「それってツラクない?」
「まじめに、なごやかに、楽しくしているだけのメンバーを巻き込むよりマシ」
「追放って、うらまれるわよ?」
「だからってギルドそのものを壊すのは筋が通らない」私は言う「と、思います」
「そっか」エリスは言う「そうよね。悪いのはチルネさん、ひとりの問題。そう」
「エリスさん、もしかしてチルネさんから個人的に攻撃されたりしてるの?」
「それてたらどうするの」
「味方になります」
「もう味方でしょ」
「さらに味方になります」
「どういうことかしら」
「チルネさんとは絶交します。チルネさんがオカシイって納得できる人たちとだけ続けます」
「できるの?」エリスは間をおいてから「そんなこと。できるの? 本当に?」
「うん」私は言います「それを、やらないと」
「でも実際うらまれるわよ」
「だとしたら逆恨みでしょ。受けて立ちましょうよ。ほんとうの味方をバラかしたらダメ」
「その通りだと思います」とエリスは言うのですが「でも、できるかしら」
「できるかどうかより」私は言います「やりましょう」
「マスターは、なんて言うかしら」
「話しましょう」
「マスターは誰か個人を攻撃するのは反対の人だと思うわ。追放なんて、もってのほか」
「それはマスターだからでしょ?」と私は聞き返します「まろんさんの個人的な考え方よ」
「それがマスターの方針よ?」とエリスも言います「逆らえないでしょう」
「鍵を預かっているのは私です」と私は言います「マスターの代わりになれないけど」
「アルゼさんはマスターより立派だと思いますよ」
「そういう言い方やめてください」
「どうして? ほんとうのことよ」
「だって私は」続けて言うのを少し、ためらいました、
「メンバーを追放する、て言ってるのです」
「わたしは賛成です」
「え」私は驚きました。追放に反対だけど、ギルドそのものを壊すのに賛成なのでは?
「決めました。わたし、アルゼさんの味方になります」
「え」
「アルゼさんが守るギルドなら、わたし残ります。ついていきます」