彼女は公園の奥まで続く道を指さして、
「覚えてる? ここ、前にも来たよね」と言った。
そうだっけ、と思いながらも、「うん。覚えてる覚えてる」と私は答えた。
公園の奥まで続く道は、遠い昔は踏み固められただけの土だった。
思い出した、
彼女は「この道イヤ」と、よく言っていたのを。
当時は塾に通うための近道ルートだったので、どうしてもというより、
つい、
このコースを選んでいた。
雨の日は歩かなかったけれど、
雨あがりのことは多くて、
「ほらあ! また跳ねちゃったじゃない」と彼女は困っていた。
白いソックスふくらはぎ、泥が跳ねているのが見えた。
彼女が自分の足を「ほらあ。また怒られるよこれ、帰ったら」と言いながら見て調べている。
彼女の短いスカートが浮かびあがるように踊り、ふとももの奥まで見えることがあった。
「この道イヤ」と私は言った。言ってみた。
「とつぜん、どうしたの?」と彼女が訊く。
「なんでもないよ」と私は答える。覚えていないか、と思った。
「でもわかるわ」と彼女が言う「この道、舗装されてなかった頃よく通ったでしょ?いつも汚れるのよ、靴とか」
なんとなく、記憶を共有できているような気がして嬉しくなった。
世界樹は黄昏に包まれても、なお輝きを放ち白く浮かびあがっていた。