MMORPGオンラインゲームで遊んでいます。 サービス終了したゲームの記憶もつづります。 現在進行形&過去進行形。 ポエム&ノベルを書いてます。
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なにをしたらいいのかわからない、って、どうしたらいいんだろう。
本当に、こんなことがあるんだ。と思った。
楽しく遊びたい。自分の本心は、わかる。でも、具体的に、どうしたら。
そんなことを考えるくらいに時間に余裕があるのかもしれないが、
どんなことをして忙しい状況でも、ふと「なにしてるんだっけ」と醒めていくことがある。
そんなときに出会った、というか、居合わせたのが賢治さんだ。
ギルドの名前が「E派」だったので、「ひょっとして宮沢賢治が好きなんですか」と訊いた。
「なんでわかりますか?」と驚いた様子だったので、
「宮沢賢治、イーハトーブかなと」と答えた。
すると名前と雰囲気のイメージからは想像のつかない絵文字と顔文字が打ち出されてきた。
嬉しそう? と解釈していいのかな。
自分からは顔文字を打ち返せなかったのが悔やまれるが、賢治さんは饒舌になり始めた。
さっきまで、エピソードでは、ほぼ無口だったのが一変している。
「ギルドたまたま誘われて入りました。でも名前イーハトーブ連想しました。一緒」
「たまたま?」と訊くと、
「はい。何度かエピ一緒してたら」
「長いんですか?」
「クローズドβからだから長いと言えば長いかも。レベルは、それほど高くないです」
「マイペースで楽しむのが一番です」
「はい。一緒」
「さっきのエピにもギルドのメンバーが?」
「いえ。まだ誰も来てなくて、SOS部屋に支援で入りました」
「おかげで助かりました」
どうしても四人以上が必要のエピソードで、他に人が見当たらず、部屋を作って看板を出しておいた。誰も来なければ、このまま今夜は終わりにしよう、そう思った矢先に、ひとり、ひとり、そして、もうひとり。
四人揃ったのを確認して、最初に現れたひとが「いこう」と言ったのを合図にエピソードを始めた。
「せっかくだから、何回か回そうか?」と、もうひとりが言った。
「レア出るんだっけ?」「出るよ」「じゃう回そう」「おともします」みたいな会話が続き、本当に何回か回すことになった。
「何回も回しているとアイテム受け取りすぎて落ちちゃいますよね」と言われて、
「ですね」と答えた。それが最初の会話だった。
「もっと遊びたいけど目が疲れるから」という理由で賢治さんはエピソード部屋を退室することになり、
「解散かな」と、別のひとが言い、
「おつー」
「またね」と去っていく。
「よかったらカフェで少しお話しませんか」と賢治さんに言われて、ふたりでカフェに入る。
E派の看板が見えた。
「アスカさん。うちのギルマスです」と紹介された。
「初めまして」と言うと、
「はじめまして。何年生?」と訊かれた。
「一年です」と答えると、
「ベルタのエピあたり?」
「その手前、四人必要なところです」
「そか。足りないときは手伝うよ~」
「ありがとうございます。賢治さんに手伝ってもらってました」
「おつです。良かったらご一緒にどうです?」
「これから集会なんですよ」と賢治さんが言う。
「ギルドに限らず友だちも来ますので。まったりと」
「おじゃまします」
ギルドがどういう場所なのかを理解できた夜だった。
集会では会話が盛り上がり、ゲームで遊ぶ以外にも、こんな楽しみ方もあるのかと感じた。
チャットだけで目まぐるしく、ログを追いかけるのも大変だった。
それだけ盛り上がった集会。でも、E派という看板を見かけたのは、その夜が最初で最後だった。
「自分も理解できてないんです」と賢治さんが言った「どうして解散することになったのか。説明はメールで。読んでも意味不」
「残念です」
「はい。残念。一緒」
楽しそうに盛り上がっているギルドがあって、
そこにたまたま居合わせることができて、
『ああ。いいなあ。こういうギルドに入れたら楽しそうだな』などと思っていた。
次に会う機会があれば、質問してみようかな。そう考えていた。
次に会う機会。ほどなくして賢治さんと校舎で会ったので、
「こんばんは」と声をかけてあいさつした。
「こんばんは。このまえの」賢治さんは移動中だったが立ち止まって答える。
「これからどこかへ?」と訊くと、
「いえ、とくに」という答えだった。
そのとき賢治さんはギルドのロゴを付けていなかったけれど、まさか解散したからだとは思わず、有料アイテムの期限が切れただけだろうくらいにしか思わなかった。だから指摘も質問もしなかった。