「マスターいなくなっちゃったね」
「え?」
ログインした途端に言われて驚いた。
真夏が言うには、「うん。いなくなっちゃった」と。
「どういうこと?」
辞めたのかな。
「ようするにマスターを辞めた、ということなんだけど」と真夏が言う、
「辞めるときに別の人にマスター役、押しつけてっちゃったのよ」
「そっか」そうなんだ。
残念なことだけど、まあ仕方ないのかな。
実を言うと、マスターとは仲が通いというほどでもなかったから、そういうこともあるんだろうなと納得してしまった。
「困ったわ」
「うん」
「どうしたらいいの」
「うん」
困った。確かに困った。
真夏が困っていると言うくらい、マスターとは仲が良かったということなのだろう。
意外だ。マスターは真面目な人だったけれど、誰かと仲良くしている雰囲気はなかったので。でも慕われていた証拠だろう、真夏が困っているのだし。
「なんてことしてくれたのよ。って感じ」
「うん」
「どうしよっか?」
「とりあえず、いつものようにクエに行くってのは、どう?」
「いいね。そうよね。それよね」と真夏が言う、「いつものことだしね」
「えっと、いま他にメンバーは」
「アリスとマオと真冬がいるわ」
「お。じゃあ五人で受けるクエ、できるね」
「できるね」
「やろうか」
「やりたいな」真夏が言う「やれるもんならね」